2009年5月17日日曜日

どうしてディーンは父ちゃんになれないのか

以下、思いつくままにSupernaturalというドラマについての考察を書き出しております。

日本ではまだ放送になっていないシーズン4のネタバレ、日本語翻訳版がまだ発売になっていない「ジョンパパの日記」の内容についてのネタバレが出てくる可能性が濃厚ですので、ネタバレ厳禁という主義の方は閲覧ご注意ください。










はい、気力が萎えてしまう前に、前回の続きです。


「どうしてディーンは父ちゃんになれないのか」


この答えは、拍子抜けするほどシンプルなものでした。

それは、ディーンが外見から内面まで、完全に母方の血を、つまりママの遺伝子を色濃く受け継いでいるから。

なーんだ!そんなのとっくの昔に知ってる?

まあまあ、ちょっと私の話を聞いてください。

この日記の中でも、ディーンの外見が美人のママにそっくりであることについては幾度となく触れてきましたし、

4歳でママを失ってしまって以来、ディーンが家族の中での 「ママ」 としての役割を担って、家族をまとめてきた事実についても、数え切れないほど言及してきました。

でもそれはあくまで、ドラマを見ていく中で誰にでも想像できる表面的な外見&役割の類似に過ぎません。

でもシーズン4に入って、

第3話 『In the Beginning

というエピソードが放送になり、ママの実家の秘密が初めて明らかにされたことで、私の中で、

「ディーンが父ちゃんに似ていない」

「ディーンが根本的なところで父ちゃんとは異なる存在である」

という事実について、これまで行方不明になっていたパズルの欠けらがあるべきところに収まるようにしっくりと納得ができるようになったのです。

それはつまり、

ディーンはあらゆる意味で、ママに似ていたのだ

ということでした。

以下、少々その観点からの考察を書き出します。







正直言って実は私、シーズン1の頃から、ディーンの『狩り』というものへの執着ぶりに微妙な違和感を覚えてきました。

行方不明になった父ちゃんを探す旅に出た兄弟の姿を追うという形でスタートした、このSupernaturalというドラマ。

第1話で、もろ私好みの父ちゃんにすっかり心を奪われてしまった私としては、とにかく一刻も早く父ちゃんを探し出して欲しいっていうのに!

私と同じくらい心の底から父ちゃんを愛していることは明らかでありながら、ディーンという子は、(早いとこ父ちゃんを探し出して、さっさとまた普通の生活に戻りたいと思ってるサムと一緒に)私がいらいらするくらい、次々と目の前に現れる『狩る』べきモンスターを放っておけず、寄り道ばっかりしようとするのです。
(明らかに父ちゃんは、兄弟の追跡を少しでも遅らせるため、ディーンのこの本能を利用してあちこち寄り道させようと、あえて狩りのコツをいっぱい書き記した日記を残したり、座標をメールしたりなんていう画策をしていたのであったことが、今になれば理解できます)

ディーンのこの傾向がはっきりと見えたのは、

シーズン1開始早々の第2話 『Wendigo』 の

あの森の中での兄弟のまさに伝説ともなった会話の中で、「寄り道なんかやめて、父ちゃんと、ママやジェシカを殺したやつを探そうよ~」 とぐずりだしたサムをなだめるためにディーンが発した台詞:

Saving people, hunting things...The family business.


もちろんこの言葉は、主に息子たちに自衛の手段を身につけさせる目的で兄弟に『狩り』の技術を教え込んでいく中で、父ちゃんが繰り返し口にしていた言葉だったのかもしれません。

でもママを殺した憎い存在のことを調べ上げていく中で、父ちゃんがママの実家の本当の仕事のことを知らないままでいられたはずはなく、(幾らサムおじいちゃんが、一匹狼主義のハンターだったとしたって)

父ちゃんとしてはひょっとしたら、代々続いた Campbell 家というハンターの家系のことを念頭において、その血を受け継ぐ息子たちに 『Family Business』 という言葉を聞かせていたのかもしれません。

ディーンが、ママの実家である Campbell の血を色濃く受け継いでいることに父ちゃんも気付いていたらしい気配は、父ちゃんが長年に渡って集めた Supernatural 狩りのための豆知識のつまった父ちゃんの日記である、

John Winchester’s Journal

の中で、父ちゃんが息子たちの成長日記を書き記した部分にも出てきます。

まずは16ページ、【1984年1月24日】Dean 5歳の誕生日

父ちゃんは、秋にはディーンを学校に入れなければならないが、少しの間でも目の届かないところへやるのが怖い。まあ半日の幼稚園くらいなら…、

なんていう愛する息子の身を案じた不安を告白しつつ、
(私どうもアメリカの学年制度がよくわかっていないのですが、父ちゃんの日記によると結局ディーンが学校に通い始めるのは翌年の6歳の時で、父ちゃんはディーンを直接一年生に入れ、先生には別の街で幼稚園に通わせていたと嘘をついたと言っています。
日本でも小学校入学前に幼稚園や保育園に通うのは当たり前ではありますが、アメリカだともうちょっと『学校』的なニュアンスのpre-schoolがあったりするのでしょうか?)


But he’s learning. He’s got a talent for guns. I can see it already. And he’ll need it.

だがあの子なりに学んではいる。あの子には銃の素質がある。もうそれが見て取れる。そしてあの子にはその才能が必要になるのだ。


そして、26ページ、ディーンが6歳になった【1985年11月14日】には:

Took Dean shooting. If he’s big enough to try comfort me, he’s big enough to start learning the tools of the trade. I only let him fire the .22, but he is a deadeye marksman. My drill sergeant would have taken him over me in a second. Times like this, I sure am proud of my boy. I have a feeling it’ll be different with Sammy. Maybe he’s just too young to show it, but I don’t think he’s got the same kind of killer instinct.

ディーンを射撃に連れて行った。あの子が俺を慰めようとするくらいに大きくなったのなら(11月2日の日記に、ディーンが狩りから帰ってきた父ちゃんのところへきて「今回の狩りは大変だったの?」と尋ねたという記載あり)、商売道具の扱いを勉強し始めるのに十分なほど大きくなったということだ。あの子に撃たせたのは22口径だけだが、あの子は見事に的を打ち抜いた。俺の(海兵隊時代の)指導教官は、なんの迷いもなく俺の代わりにあの子を教え子に選ぶだろう。こんな時、俺は本当に俺の息子を誇らしく思う。サミーに対してはこうはいかないような気がしている。もしかしたらあの子はまだ幼すぎて、素質が目に見えないだけなのかもしれないが、サムがディーンと同じような殺しの本能を持っているとは俺には思えないのだ。



ね?父ちゃんははっきりと、ディーンが自分ともサムとも違う、生まれながらの『ハンターとしての素質』を備えていることに気付いています。

つまりディーンには、稀代の名ハンターとの呼び名も高かった John Winchester もおよばないほどの天性の『狩り』の本能がその遺伝子に強く深く刻まれており、

ディーンはその本能を、他でもない、生粋のハンター一家の血を引いたママから受け継いだ、ということが言えると思うのです。

妻を失うという悲劇によりやむなくハンターとしての道を歩き始めた父ちゃんと、まさに父ちゃんのコピーのようなサムにとって、

『狩り』というものは、あくまでママを殺した仇を見つけて復讐するための手段であって、いつか目的を達成した暁には普通の生活に戻るというのが最終目標ということになるのですが、

一方、遺伝子レベルからのハンターであるディーンにとっては、生きていくことと狩りをすることはほぼ同等な意味を持ち、その狩りの本能はあらゆるSupernaturalなものに向けられて、父ちゃんやサムのように、ママを殺した存在を退治すればそれで終わりというものではない、ということになります。

それは人でなしの父ちゃんに他の選択肢を与えられないまま、無理やり『狩り』だけを教え込まれたからでもなんでもなく、ママゆずりの遺伝子が、本能としてディーンを狩りに駆り立てている

ということなのです。


シーズン1の第1話で、無理やり大学から連れ出したサムと一緒に久々に「白いドレスの幽霊」を退治した後のディーンがどれだけ嬉しそうだったか、

最近でもシーズン4の第5話『Monster Movie』や、第17話『It's a terrible life』なんかでも、純粋な意味でディーンが『狩り』というものを楽しんでいる様子が描かれていますよね。

とにかくシリーズ全体を通して、ディーンにとって『狩り』とは

- 自分の命と引き換えに父ちゃんを失ってしまったという事実への罪悪感(S2)

- 可愛い弟を置き去りに一年で地獄へ行くという約束をしてしまった事実への不安&罪悪感(S3)

- Apocalypse だとか、天国vs.地獄なんていうとても手に負えないような大きなことから目をそらすための逃避&地獄で自分がしてきたことへの罪悪感(S4)

以上のような事実に押しつぶされないための精神安定剤的役割を果たし、ディーンの心の安定に強く結びついた必須のものにもなっているということは、ずーっとエピソードを追い続けてきた私たち視聴者の目にもはっきりしている事実です。

つまりディーンがいくら父ちゃんになりたいと願い努力したとしても、ディーンと父ちゃん(&サム)は、ハンターとして根本的に全く異質の存在である以上、それは適わないことだったのです。

でもディーンがこの世のなによりも愛し尊敬する「父ちゃんになれない」という事実は、ディーンの心の中に深いトラウマとして根をはることになり、

(性格から外見から…)父ちゃんのコピーとも言える弟サムとディーンとの間を裂こうとする悪魔や天使たちから、ことあるごとに攻撃を受ける格好の弱みとして利用されてしまうことになっていってしまうのです。





頭に浮かんだ考察を忘れてしまう前に、と、取り急ぎ続きを書き出してみたものの…、

なんだか同じような理屈を繰り返し捏ね回しただけという考察になってしまいました。

もうちょっとじっくり練って、もう少しまともな考察にしたいところではありますが、

ためらっているとまたすぐに一週間たってしまうので、一旦またこれで投稿してしまうことにします。
(後から見返して、凄く修正したくなるところがありそうな気もするのですが…、それはまたその時ということで)

次は、再び、父ちゃんの愛情に対するディーンの不安についての考察の続きに戻りたいと思っています。
(いや、もう少しディーンのハンターDNAについて語ることになるかもしれません…)

4 件のコメント:

amber さんのコメント...

こんばんは。力作の考察の結論、お待ちしていました。
生まれながらのハンターという意味がとても納得のいく考察のおかげで、いろんなディーンの言動も腑に落ちました。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」もどきの「In the Beginning」は、そういう意味でとても重要なエピソードなのですね。
父のような弟と、母のような兄で、ウィンチェスター兄弟は2人でもう4人家族です!(笑)

藤よう さんのコメント...

amberさん

時間がないーと言ってる内に、頭に浮かんだことをどんどん忘れてしまいそうで、無理やり書き始めてみることにしたものの…、
なかなか思うようには進まず、じりじりしていますが、なんとか挫けずに続きを書いていければと思っています。

父のような弟と、母のような兄は、またそれぞれに良く似た祖父母から名前をもらって。
この兄弟が並みの仲良しでは納まらないのも無理はありませんね!

eiri さんのコメント...

藤葉様

こんばんは。お邪魔いたします。
下の記事も、こちらの記事も最後まで楽しく拝見させて頂きました。素敵な考察をありがとうございます。

下の「父ちゃんと息子たち」では、考察を拝見しながら、「そうそう!サムったらこんなこと言ってたわ!」とその場面を思い出したり、リンクして下さっていた過去の妄想日記を再び拝見したりして、ひとつの記事で何倍も楽しい思いをさせて頂きました!

そして、こちらの記事では、生まれながらに『ハンターとしての素質』を備えているディーンについての考察を興味深く拝見しました。
藤葉様が訳して下さったパパ日記の一文、「本当に俺の息子を誇らしく思う」にホロリときました。
叶わない夢ですが、サムおじいちゃんが生きていたら同じように誇らしく思ってくれたに違いないよね、と思わず想像してしましました。

それから、最後になってしましましたが、新しいお仕事が決まられたそうで、おめでとうございます~。
お話を伺う限り、慣れない内はかなり大変そうですね。お仕事を変わる時は精神的にもかなり負担がかかりますので、あまりご無理をなさらないよう、くれぐれもお体ご自愛下さい。
新しい会社が、藤葉様の波長と合うお仕事場だと良いですね。

今回も素敵な考察をありがとうございました。次の更新も楽しみにしています。

藤よう さんのコメント...

eiriさん

父ちゃんについて何かを書こうと思うと、まず動いている父ちゃんの姿を復習したくなってしまい、それから前にはなんて書いたっけ?と昔の日記を読み返し…などなどに時間をとられて実質日記を書く時間が減ってしまうのが辛いところです。(笑)

上には抜書きしなかったのですが、私は

手元から手放すのが怖くて幼稚園にすら行かせてやれないでいる内に、ディーンは「いつから学校に行けるの?」と質問しなくなった…

という一文にホロッと泣かされてしまいました。

過去のエピソードを振り返っても、パパの日記を読んでも、父ちゃんが極限の状況下で精一杯息子たち(特にディーン)を愛していたことが伝わってきて胸が痛くなるほどなのですが、
父ちゃんの立場はどのシーズンになってもなんだか…という感じですよね。

ここまでしつこく父ちゃんをコケ下ろす演出を目にしていると、最終シーズンである(とクリプキが宣言している)第5シーズンのどこかでは、再びJDMに出てきてもらって、父ちゃんの名誉回復をさせるつもりなのではないか…という期待をどうしても持ってしまう私です。

心の準備もしない内にふと気付けば新しい職場に移ることになってしまったのですけれども、なんとか楽しく仕事をしていくことができればいいなと思っています。
(日記を書く時間も作れるといいのですが…)