2010年12月26日日曜日

Admit One 読了

読み始めたら、やっぱり止まらなくなって、ほぼ一気に読み終えてしまいました。

読み始めは、この前の日記にも書いたとおり、今ひとつ好みとはいえない文体&設定&キャラクターで、

うーん…、かなり信頼できる筋からのお奨めだったはずだけど、大丈夫かな…という不安さえありましたが、

いやー、読み終えた感想としては、面白かったです!


【あらすじ&感想】

今後、この原書を読んでみようという方にとっては、ネタバレとなってしまう可能性もありますので、ご注意ください。





Gunningという、テキサスの小さな田舎町で高校の教師をしている Tom Smith(まるで偽名みたいですが…)は、大学を卒業した日に起こり、彼の心と体に大きな傷を残すことになった、ある事件をきっかけにして、

決まった相手を持つことをせず、時たま、ヒューストンなんていう大きな町へでかけては、Gay Clubでひっかけた相手と一晩限りの関係を持つだけ、という、完全にクローゼットに隠れたゲイとなってしまっていました。

ところが、ある時、そんなGay Clubへと出かけた週末、Kevin Bannerman という一人の男性と出合ってしまい、

さらに Tom の高校で、毎年行っている演劇発表会で取り上げる今年の演目が、『Rent』という、同性愛、ドラッグ、AIDS なんかをテーマにした、保守的なテキサスの中でも、さらに保守的な Tom が暮らす小さな町ではとても受け入れられそうもない、刺激の強すぎるミュージカルに決まってしまい、Tomが助監督のポジションに指名されてしまうにあたり、

大学卒業以来15年以上も、頑なに、守り貫き通してきた、Tomの安全な Coloseted-Gay としての生活が、少しずつ、でもある意味では急速に変化していくこととなります。


***


私の一番のお気に入りのGay Romance 『Caught Running』が、Slash系の、主演のカップルがどっちも女性にモテモテでもおかしくない男性同士の硬派な恋愛を描いた物語だとすると、

今回読んだ『Admit One』は、なんのとりえも魅力もない主人公が、ある日突然、ハンサムで逞しい男性から見初められ、強引に迫られて、否応なしに恋に落ちていく、という、

まさに Gay 版のハーレクイン小説だと言えるのかもしれません。

その気になれば、引く手あまたの魅力的な男性が、なぜ自分なんかを?

というのは、どう抵抗しようとしても、シンデレラストーリーが大好物だと、最終的には認めざるを得ない、世の大半の女子にとっては、やっぱりどうしても惹き込まれていかざるを得ない 「猫にまたたび」的な魅力的なテーマなんですよね。

もちろん、Tomが、何の魅力もない平凡な男である、というのは、「I」 という一人称で物語を語るTom自身が自称していることであって、

最終的に、Kevinの目からみて、Tomは Good-Looking だし、他にも色々な魅力を兼ね備えた魅力的な人物であることが、(かなり後半になってから)明かされたりもするわけなのですが、

Kevinのような素敵な男性から、誤解のしようもなくはっきりとした態度で 「好きだ!」と迫られつつも、

強烈に深い傷を残した過去の事件からのトラウマ&恐怖のような感情も手伝って、

自分なんか…、と、何度もKevinから逃げよう、Kevinとの関係を断ち切ろうとする、Tomにどうしようもなく Sympathy を煽られてしまって、

物語の冒頭では、ほとんど感情移入できなかったTomのことを、

ふと気づけば、頑張れ! 頑張れ! と、不覚にも、数滴の涙すらこぼしつつ必死に応援している自分がいた、という感じで、まんまと一気に最後まで読まされてしまいました。

ただ、これは難点というべきなのかどうか、わかりませんけれども、

前回の「Admit One」の日記の中で、主人公が「Supernatural」についてコメントしているシーンがある、と書きました。

これを筆頭に、オバマが当選した大統領選のことだとか、この物語の現在である2008年当時の様々な時事ネタが結構盛り込まれていて、2010年の現在ですら、ちょっと古さを感じてしまうのがちょっともったいないような気もしたのですが、

ストーリーの中に時事ネタを盛り込むというのも、作者の個性でもあるわけなので、その辺りの評価は分かれるところなのかもしれません。

一方で、

高校の演劇発表会に向けミュージカルの練習をする、ということで、この小説が書かれた2008年当時には、(確か…)放送すらされていなかった、現在大人気の 『Glee』 を時々彷彿とさせるシーンも結構出てきて、登場人物たちの顔が、だんだん『Glee』の出演者たちの顔にすり替わっていったりもしました。


***


でも最終的な感想としては、面白かった、読んでよかったと思います。

また何か名作 Gay Romance 小説の情報が入ってこないだろうか…。

でもちょっと前の作品は、皆、Kindle 向けの電子書籍媒体になっている印象で、本は紙で読みたい、という、古い気質がまだまだ根強く残っている私としては、非常に悩ましい時代に突入してきているという印象です。

Kindle向けの電子書籍データの、iPhone版とか、iPod Touch版も出た、というような情報もありますが、(iPad版はまだということなんですか?)

ううう~~~、

現在携帯電話すらも必需品とはいえない私としては、どんどん選択肢の幅が広がっていく電子機器の波に、一つも手を出す前からうんざりしている…という情けなさ。

私の場合、「読書」さえできればいいんだから、すっぱりと Kindleを買ってしまおうか…、という誘惑に、かつてあと一歩で屈するところまで行ったものの、

iPad の登場で、一気に 「電子書籍ももちろん iPad で!」 みたいな流れになってしまった現在、

かつてのベータカセット(古すぎる?)みたいに、近い将来、Kindle そのものが市場から撤退してしまうようなことになったら…という、不安も拭い去れず…

とりあえず、まだ紙の本が買える間は、紙の本を買っていればいいのかな…。

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